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嬉し哀し楽し心細し

 11月はほぼ毎週、なにかしらイベントが入っていて、すっかり本業は滞っておりました。とくに文庫本をせっせとインターネット空間に売りに出す作業はまるではかどらず。 ただそんななかでも『夫・車谷長吉』の文春文庫初版1刷が売れたりして、自分が好きな本が売れることのうれしかなしが、晩秋の下館で肌身に沁みるのでした。 ただ、私は古本屋をやっていながらおかしいのですが、紙でもデジタルでも、本を所有することへの執着はまったくなく、むしろ本なんて、図書館で読めれば十分、所有する意味無しと考えている人間です。死ぬときまでには、持っているすべての本を手放して、最終的には「本の無一物」になりたいのです。だから、本を売るということは、人生のおしまいへと向かうことでもあります。 神保町の交換会に、これまで3度行きました。三島由紀夫のサイン本なども売り買いされているのですが、私自身は、サイン本なんて欲しくもなんともないので、そうした稀覯本には入札もいたしません。ひたすら、文庫本で揃えておきたいものを物色して、おそるおそる入札しています。 この年になって、まったくの新参者として、ルールの確立された場所に参加することの心細さったらありません。売り買いの初歩的なルールさえ頭の中から抜け落ちていて、市場の係員にご迷惑をかけてしまうこともありました。勝手のわからない場所で立ちすくむ54歳。 1万円以上の出品には、高い順から3つ入札金額を札に書けるのですが、一番安い値段で落札できれば「あれ? 示した値段が高かったかな?」と己の高値づかみを案じますし、逆にうまく競り買えた時はやたらとうれしかったりします。 神保町は、大学を出て社会人になったとき最初に勤めた街で愛着があり、神保町には愛書館中川書房という古書店があって、ここの文庫本の充実が私にとっての憧れなので、神保町に出かけるたびに中川書房の棚を覗きに行きます。東京堂書店の知の泉をチェックしたあとで、岩波やちくまの新刊文庫は現物を見ながら買います。エチオピアの野菜カレーが好きです。 いまは本業に全力集中は難しいのですが、下館と神保町を往復しながら、少しずつ私なりの店作りを進めていきたいと思います。