東京は自由が丘駅前にある百年以上続いた新刊書店が、来月で店を閉じるようです。気づけば新刊書の価格がかなり高くなり、逆にその中身はスッカスカになってきている気がします。某コンビニチェーンを連想させるような「上げ底」と値上げが繰り返され、新刊書市場そのものが、良質な読者子からそっと見放されつつるのではないかと思います。
Amazonで古書籍が売れた際に、「セラー」と呼ばれる古書の売り手から、Amazonが徴収している成約手数料が、この4月から大幅に(税別80円から140円に)引き上げられます。
例えば、送料込みの売価が1000円の古本がAmazonで売れた場合、Amazonは成約手数料税込154円+売値の15%である150円、合計304円を持っていく計算です。セラーの手元に残る696円から送料、経費、仕入れ原価を引いたら、薄利しか残りませんね。
おそらく今年4月から、古書市場全体が少なくとも税込66円ほど値上がりします。古本を買うなら3月までに買っておくことを強くおすすめします。セレクト文庫は、そもそもAmazonで売る気はさらさらなく、お店ではAmazon最安値保証で古本を売っています。だからセレクト文庫の店頭価格も、4月以降はおそらく上がります。
新刊書も古書も、どこかでAmazonと手を切らないと、ただAmazonを太らせるだけのネガティヴ・フィードバック・ループを断ち切ることはできません。日本人全体がAmazonにせっせと金を貢ぐことで、巡り巡って新刊書籍の質が落ちる害を被っています。この負の連鎖による最大の被害者は、実は読者です。「Amazonからの逃散」が今年の鍵概念になると私は思います。日本人の得意技である「逃散」が今年はAmazonへも向けられます。
一方、年末から火が着き始めたフジテレビ問題は、多くの広告主がフジテレビそのものへの広告出稿をキャンセルする事態へと拡がっています。2000年代には、フジテレビは三菱商事や電通よりも入るのがむつかしい就職先でしたので、私のような世代には隔世の感があります。会社を辞めてからすぐにチューナーの付いたテレビを捨ててしまった私は、最近の地上波テレビを1秒も視聴していないのでよくわかりませんが、この事態を3S(セックス・スポーツ・スクリーン)というGHQの「統治の技法」の完全な終わりだと勝手に思っています。
テレビマンなどの業界言葉(ex.ギロッポンでチャンネーとシースー)は、もともとGHQ向けのバンドマンやそのプロモーターたちが内々で使っていた言葉だったようです。旧ジャニーズも、源流はGHQにたどり着きます。
日本人にとってのスポーツの頂点であるメジャーリーグで大活躍する日本人スラッガーという強烈な日差しの陰には、その通訳のオンラインカジノ依存症があり、「女子アナ」というエスタブリッシュメント階層のセックスシンボルの濃い日陰には、インナーサークルの酒池肉林があるとされ、敗戦後最強であった統治のためのスクリーン、テレビ局の広告や受信料によるビジネスモデルが、終わろうとしています。
米国においては、国民を広く遍く洗脳する役割は長くハリウッドが担いました(ハリウッド・システムは、2017年のワインスタイン事件→Mee too運動で崩壊)が、日本においては、地上波テレビ(NHKと民放)がその役割を担ってきました。フジテレビでいえば、「オレたちひょうきん族」(強きを助け、弱きを嘲笑う)、「オールナイトフジ」や「夕焼けニャンニャン」(性搾取のグレーゾーン化や低年齢化)、「北の国から」(資本主義への敗北の受容)などが、代表的な洗脳コンテンツだったと思います。国民の内心を腐敗させ、統治システムにへつらうことを良しとする隷属精神をこれでもかっと叩き込んできたと思います。
いまでは、日本におけるスクリーンは、YouTubeやNetflixやDAZN、InstagramやXなどの海外プラットフォーマーの手に完全に移行してしまいました。これは新たな統治の技法の確立であり、このシステムには良くも悪しくも、旧ジャニーズのような日本人による海外エージェントはほとんど介在していません。もはや、誰に統治されているのかもよくわかりません。米国のプラットフォーマーによる、掌のスクリーンに映し出されているコンテンツは、セックスやスポーツなどよりもっと有害な、おぞましいものばかりです。大なり小なり、ルーマニアのようになっていると思います。
いま起きつつある3S時代の終わりに何をすればよいか? 私の答えは簡単です。GAFAM GO HOME. Amazonでは新旧いかなる本も買わないこと、スマホの電源を切ってスクリーンを遮断し、かつてまだ質の高かったころの古本をオフラインで静かに読むことです。